テクニカルエンジニア(ネットワーク)過去出題問題

 平成14年 午後1 問1

最終更新日 2006/02/26
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Tomのネットワーク勉強ノート
 過去問(午後)
   テクニカルエンジニア (ネットワーク)過去問(午後)
     テクニカルエンジニア(ネットワーク)過去問 平成14年 午後1 問1

問1

無線LANシステムの構築に関する次の記述を読んで、設問1〜4に答えよ。

 K社は東京に本社があり、本社には約200名の社員がいる。

 本社の会議室には、電子黒板やOHPが常備されていたが、紙を使用した会議が主
流であった。このたび、会議のペーパレス化を目指して、システムを構築することに
なった。このシステムは、事務室で使用しているグループウェアを会議室からも使用
可能にするもので、大型ディスプレイに表示されている文書を見ながら、関連するほ
かの文書を自由に閲覧することができる。これを実現するために、情報管理部門のN
課長は、SI業者に提案を要請した。

 SI業者の担当者であるY君は、早速N課長と打合せを行うことにした。

[提案説明]

次は、Y君とN課長の会話である。
Y君:先日、ご要請のありました会議のペーパレス化についてですが、パソコンの
   設置自由度が高くて移動も簡単な無線LANを利用したいと思います。伝送
   速度は、IEEE802.11b規格によるもので最高【 a 】Mビット/秒、
   IEEE802.11a規格によるもので最高54Mビット/秒になります。図に示す
   ように、現状のLANに無線LAN構成を追加します。今回は、当社で実績の
   あるIEEE802.11b規格のものを推奨します。


図 本社のLAN構成

N課長 :NPCを持ち込んで、LANケーブルなしで使えるわけだね。
Y君  :はい。電源コードを接続するので、ついでにLANコードを接続すればよい
      と考える人もいます。しかし、短時間の会議において、NPCがバッテリ駆
     動で済む場合や席の移動が頻繁な場合には、便利さを感じると思います。
N課長 :電波を使用するとなると、いろいろと注意することがあるのだろうね。
Y君  :はい。今回推奨するものを前提にお話します。まず、2.4GHz帯の【 @ 】
     バンドという電波を使用するので、混信に対する注意が必要です。スペクト
     ラム拡散方式という帯域の広い電波形式を利用しているので、比較的混信や
     ノイズに強いといわれていますが、混信があると、伝送速度が低下したり、
     最悪の場合には通信できなくなったりします。
     日本では、14個のチャネルを利用できますので、混信のあるチャネルを
     避けて利用します。パソコン用の無線LAN電波測定ツールがあるので、
     IEEE802.11b規格の電波の強さを測定できます。これを見てチャネルの混み
     具合を判断することもできますが、このツールは、IEEE802.11b規格でない
     電波には反応しません。それも含めて測定するには、スペクトラムアナライ
     ザのような計測機器が必要です。
N課長 :そのスペクトラムアナライザとはどういうものなの。
Y君  :横軸に周波数、縦軸に電波強度を表示するものです。
     なお、【 @ 】バンドの幅が約100MHzなのに対し、各チャネルは約
     22MHzの帯域幅をもっています。互いに干渉しない独立した帯域で利用す
     る場合には、最大【 b 】個のチャネルの利用になります。しかし、実
     際のチャネルは、重なった帯域で割り付けられ14個のチャネルになって
     います。
     また、NPCは、複数の無線LANアクセスポイントから電波を受信できるよ
     うにし、強い電波の方を選択する(以下、アクセスポイントの交替処理とい
     う)ようにします。これは、アクセスポイントの障害時の対策にも有効です。
     次に、だれでも電波を受信できるので、セキュリティに対する注意が必要
     です。無線LANのセキュリティを確保する方法には、次の三つがあります。
     【 A 】は、同じ文字列を設定した無線LAN機器(無線LAN
     クセスポイント、無線LANカード)間だけの通信を許可する方法ですが、
     どの機器とも通信することを目的にしたANYという文字列の使用が可能な
     ので、セキュリティ面での効果は小さいといえます。
     “MACアドレス制限”は、無線LANカードのMACアドレスを無線LAN
     アクセスポイントに登録し、登録された無線LANカード以外との通信を制
     限するものです。登録の手間も増えますが、不正侵入を防ぐ比較的確実な方
     法といえます。
     “WEP”は、通信データを暗号化して有線並みの機密性を確保するもの
     です。販売されている製品のかぎ長は、40ビットと【 c 】ビットがあ
     りますが、40ビットは短いといえます。今回は、機密性のより高い
     【 c 】ビットのものを推奨します。
     以上 三つのセキュリティ機能の併用を推奨します。
N課長 :業務サーバとパソコン間で経理や人事のデータを暗号化しているが、無線
      LANのデータ暗号化を使えば、この暗号化は不要になるのかな。
Y君  :いいえ。それは、現状どおりにしていただく必要があります。
N課長 :そうか、分かった。ほかに注意することはあるのかね。
Y君  :電波を使う上での注意点ではありませんが、各社の無線LAN機器の相互接
     続性にも配慮が必要です。WECAという業界団体が相互接続性を確認したも
     のには、【 B 】というマークが表示されていますので、参考にされる
     とよいと思います。
N課長 :よく分かった。それでは、具体的な設計に着手してくれ。

Y君は、間仕切りの材質調査や現状の電波測定を行い、設計構築に取り掛かった。

[運用テスト]

無線LANアクセスポイントの設置も終わり、Y君がユーザの協力を得て運用テス
トを実施したところ、次の問題が発生した。

(1)速度低下
会議室の窓側に着席した人のデータ転送だけが遅くなっていたので、Y君が原因
の調査を行ったところ、スペクトラムアナライザでチャネルID11近辺に強い電波
が観測された。チャネルID11に設定していたアクセスポイントの電源をオフにし
てみると、パソコン用の無線LAN電波測定ツールの電波強度表示は、ゼロに変化
したが、スペクトラムアナライザの表示には、ほとんど変化が見られなかった。調
査の結果、外壁に面した窓がある会議室では、チャネルID11の利用を避けるべき
との結論に達し、チャネルの割り付けを見直した。

(2)通信停止
1台のアクセスポイントでハードウェア故障による障害が発生した。しかし、こ
の障害時にアクセスポイントの交替処理が機能しなかったので、Y君は、再現テス
トを行って、その原因を調査した。その結果、監視サーバからアクセスポイントに
発行したpingコマンドはタイムアウトになるが、パソコンの無線LAN電波測定ツ
ールによるこのアクセスポイントの測定値は正常であることが分かった。故障の部
位によっては、アクセスポイントの交替処理で通信を回復できない場合があること
を見落としていたので、対策を実施した。 

これらの対策後、K社の無線LANシステムは、順調に稼働した。


設問1

Y君の提案説明に関する次の問いに答えよ。

(1) 【 a 】〜【 c 】に入れる適切な数値を答えよ。

(2) 【 @ 】〜【 B 】に入れる適切な字句を解答群の中から選び、記
  号で答えよ。

    解答群
      ア DS-SS イ ESS ID  ウIDN  エ ISM オ WAP カ Wi-Fi

設問2

K社では、WEPによる暗号化を採用したが、無線LANを使用するときでも、
業務サーバとパソコン間のデータ暗号化を継続した。その理由を、WEPの暗号
化区間を考慮して、40字以内で述べよ。

設問3

会議室の窓側の席で生じた速度低下の問題において、調査で判明した事象から
原因として考えられることを、20字以内で述べよ。

設問4

運用テストで発生した無線LANアクセスポイントの故障において、アクセス
ポイントの交替処理が機能せず通信が回復しなかった原因を、30字以内で述べ
よ。また、この原因による事象が発生した場合の対応策を、30字以内で述べよ。

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