テクニカルエンジニア(ネットワーク)過去出題問題

 平成9年 午後2 問1

最終更新日 2004/01/24
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Tomのネットワーク勉強ノート
 過去問(午後)
   テクニカルエンジニア (ネットワーク)過去問(午後)
     テクニカルエンジニア(ネットワーク)過去問 平成9年 午後2 問1

問1

社内情報システムの再構築と運用管理に関する次の記述を読んで、設問1〜6に答えよ。

[業務システム]
証券会社S社では、ホストコンピュータ(以下、ホストという)を本社(東京)にお
き、本社、支店(横浜、名古屋、大阪)及び営業所(関東地区20、中部地区5、関西地
区10)の端末と専用回線で結び、業務システムを構築・運用していた。ホスト、端末間
は端末制御装置(TCE)を経由しHDLC手順で接続していた。端末はエミュレータを搭
載したパソコンを利用していた。ネットワークの構成を図1に示す。



図1 業務システムネットワークの構成

本社ビルはテナントピルであり、営業部や債券部など4部署のほかに、システム開発
部、システム管理部、総務部、経理部、企画部が各フロアに分散している。

[情報系システム]
本社内には、業務システムとは別に、情報系システムが構築されていた。情報系シス
テムは、業務システムに入力された売上げ、入金などのデータを集約してデータベース
化し、専用の検索ソフトによって端末に数値表を出力していた。情報系システムは、業
務システムと同様に、ホストとエミュレータ搭載のパソコンで構成されていた。本社の
企画部などは情報系システムの数値情報を基に、支店・営業所の管理や、経営内容の分
析を行っていた。この情報系システムに対して、別の切り口での集計値が欲しいとの要
望がユーザから次々に出され、開発部門は対応しきれずに困っていた。また、古くから
あるシステムなので使い勝手が悪く、ユーザインタフェースの改善が望まれていた。更
に、検索結果をパソコンで利用するための、パソコンとのデータ連携の実現などの要望
もユーザから出されていた。

[社内LANと社内統合OA]
一方で事務処理の一層の効率化を推進する必要から、本社の一部のフロアで個別に
LANが構築された。文書共有やプリンタ共有のために部内サーバを設置し、フロア内に
10BASE-Tケーブルを配線してパソコンを接続した。これを部内LANと呼ぶ。
その後、ファイバケーブルがフロア間に設置され、ルータを介して各フロアの部内
LANを接続できるようにし、全フロアにLANを展開していった。ファイバケーブルと
ルータを併せて共通LANという。
アプリケーションとしては社内電子メールなどを追加しており、全体として社内統合
OAと呼ぶ。必要なソフトウェアは、各部の依頼を受けてシステム開発部が市販ソフト
ウェアを選択してインストールを行い、一部は独自に開発した。
引き続き横浜支店内に支店内LANが構築され、本社の共通LANにISDNで接続された。
本社及び横浜支店のLAN構成を図2に示す。今後、他の支店や営業所に対しても、支店
内LAN、営業所内LANを展開する予定である。部内LAN、共通LAN、支店内LAN、及
び営業所内LANを総称して社内LANと呼ぶ。



図2 本社及び横浜支店のLAN構成

[業務システムネットワークの社内LANへの統合]
社内LANの進展に合わせて、経費削減、効率化などのため、業務システムネットワー
クを社内LANに統合する案が出された。この案に従って、業務システムのホストを共通
LANに接続し、本社の端末はTCE接続から部内LAN接続に変更した。横浜支店の端末
もLANボードを追加して支店内LAN接続に変更した。本社、横浜支店間はISDNを廃止
し、高速ディジタル回線で接続した。業務システムは、以上のような接続形態で、現在
も利用されている。今後は各支店・営業所にLANが設置されるに従い、同様に接続を変
更していく予定である。

[情報系システムの再構築」
本社及び横浜支店の業務システムネットワークを社内LANに統合した後、情報系シス
テムについても、ネットワークを社内LANに統合した。同時に機能をレベルアップして、
従来からのユーザ要望を満たすとともに、支店内LAN・営業所内LANが設置されれば、
支店・営業所からの検索も可能となる構成とした。情報系システムの社内LANへの統合
は、業務システムと異なる構成で実現された。まず、情報系システム用のデータベース
サーバを設置し、ホストからデータをファイル転送して、サーバにデータベースを構築
した。併せてデータの集約度を変更し、一部はより原データに近い形でデータベースに
格納した。

[社内統合OAの拡充]
社内統合OAも更に内容を充実させた。組織一覧表、規程集、社内報などの文書共有
を実現するとともに、会議予約や、交通費精算システムを実現した。これらの機能の一
部は、後述のイントラネットによって社内向けWWWサーバを利用して実現されている。

[社内情報システムの最終形態]
今後は、社内LANをインターネットに接続し、各部で、社外情報を迅速に収集できる
ようにする予定である。また、本社に社外向けWWWサーバを設置し、情報発信を
行う予定である。図3にS社の社内情報システムの最終形態を示す。



図3 社内情報システムの最終形態

[イントラネットの検討]
次は、[情報系システムの再構築]と[社内統合OAの拡充]の企画段階で、システム
開発部のT部長と担当のA君が行った会話である。

T部長:
情報系システムの再構築というと、最近話題のイントラネットを検討せざるを
得ないと思うので、我が社で利用する可能性について考えてみよう。

A君:
いろいろな定義をする人がいて、議論が混乱しがちですから、議論に入る前に
イントラネットの定義をしておきたいと思います。インターネットの技術を利
用して企業内情報システムを作ることという定義でいいですか。

T部長:
定義はそれでよいだろう。ところで、そのインターネット技術にはどんなもの
があるのかね。

A君:
プロトコルとかいろいろありますが、利用する観点から言うと、要するに
HTMLで記述したファイルをサーバに作って、それをWWWブラウザを利用し
て読むシステムを作ることと言ってよいと思います。

T部長:
一般的には、どんな部分をHTML化するのがよいと言われているのかね。

A君:
不特定多数の利用者に対して文書を公開する業務にまず利用されているようで
す。インターネットはもともと【 a 】なシステムですから、高い【 b 】レベ
ルを必要とするシステムには向いていないようです。

T部長:
我が社でいうと、社内統合OAに新しく取り込もうとしている文書共有が最も
向いている部分ということになりそうだね。

A君:
情報系システムも向いているように見えますが、こちらは何点か検討する必要
があります。頻繁に更新される【 c 】をWWWブラウザで見るためには、
HTMLとの連携を実現する必要があります。最近では、市販のデータベースソ
フトの中にこの連携機能を備えたものがありますが、そのようなデータベース
に変更してほかに問題がないか確認する必要があります。また、情報系システ
ムは分析が主目的なので、結局は数値データを表計算ソフトで加工して利用し
ますから、今回やろうとしている、データベースソフトと表計算ソフトを連携
する案の方がよいといえます。情報系システムのイントラネット化は、実現を
少し先に延ばして、データベースソフト連携機能が落ち着き、我が社でのイン
トラネット利用が定着してからでも遅くないと思っています。

T部長:
では、情報系システムは原案どおり、データベースソフトと表計算ソフトの連
携を用いて再構築することにしよう。
ところでWWWブラウザについては、我が社の状況はどのように考えたらよ
いのだろう。

A君:
我が社のインターネットの利用は、ごく一部の部署が個別にダイヤルアップ接
続して、情報収集のために利用しているに過ぎず、いわば後発の企策と言えま
す。その結果、WWWブラウザについても、利用のノウハウはそれほど浸透し
ているわけではありません。

T部長:
我が社では、もしイントラネットを導入すると、WWWブラウザに関する教育
を行わなければならないということになるね。しかし、それまでしてイントラ
ネットを利用する理由を明確にしておかなければいけないな。

A君:
情報システム部門としては、クライアント側ソフトウェアを気にする必要がな
いというのが非常に大きな利点だと思います。ハイパテキストを作ってしまえ
ば、情報システムがいわば出来上がりです。検索や表示の機能はインターネッ
ト技術でツールとしてすでに出来上がっていて、そのツールの代表がWWWブ
ラウザだと言うことができます。会社によっては、既に各種のパソコンが導入
されてしまっていて、データ連携をとろうとすると、イントラネットが非常に
有効という所もあるようです。

T部長:
我が社は、パソコン利用面では後発であったので、OSや【 d 】を一括購入で
き一元化しやすいと言える。そんな状況でも、文書共有をはじめとする社内統
合OA実現のために、イントラネットを導入する価値があるのだろうか。

A君:
【 e 】。

T部長:
分かった。イントラネットを導入することにしよう。

[社内情報システム運用上の問題点]
情報系システムの再構築が終了し、イントラネットも稼働開始した現在、ネットワー
クの運用が大きな問題となってきた。システム管理部は従来のホスト中心のネットワー
クの運用管理をしており、管理対象としては、ホスト、専用回線、TCE及び業務用パソ
コンに限られていた。現状では社内LANの運用にあまりかかわっていない。今後、対象
範囲を社内LAN全般に拡大することが課題となっている。各部、支店及び営業所(以下、
ユーザ部門という)は、トラブル時の対応などについてシステム開発部やシステム管理
部に不満をもっている。また、開発を担当したシステム開発部も運用管理をシステム管
理部に移管したいと考えている。
最近、横浜支店で業務システム端末の応答時間の悪化が発生した。原因は、前月に支
店内のレイアウト変更に伴うLAN拡張工事をした際、既存のコネクタの接触不良を起こ
していたことであると分かった。レイアウト変更の際のLAN接続工事後の図面管理がし
っかりしていなかったので解決に時間を要した。
また、全社員にパソコンが配布されるにつれ、社員に対する社内統合OA利用の技術
指導が不可欠になってきており、システム開発部、システム管理部が指導を担当するこ
とになっている。最近はパソコンの一時的な動作不能がよく発生し、再起動することが
多い。この原因はゲームソフトなどの無断インストールである。更に、電子メールにお
いても、単鈍なあて先の指定ミス、転送の設定ミス、メールに添付するファイルの指定
ミスなどがあり、そのためエラー通知のメールが多発し、トラフィックも増加している。
対策として強力なユーザ指導が不可欠である。

[運用体制の整備]
システム管理部のR部長はこれらの状況を考慮し、システム管理部を中心としユーザ
部門が部分的に責任を負う管理方針とすること、及びシステム管理部のユーザ部門への
指導サービスを、ヘルプデスク機能で対応するように決めた。そこで、R部長はネット
ワーク技術に詳しい部員のB君にこの方針を説明し、具体的な方策を検討するよう指示
した。B君は、LAN管理にはネットワーク技術の知識が必要なこと、日々変わるネット
ワーク構成の的確な把握が大切であることを考慮し、ネットワーク監視装置の導入、自
部門の要員教育とネットワーク構築の手続の明文化を進言した。R部長は監視装置の導
入を実施し、システム管理部貝の研修計画を立てるとともに、社内からの要員の移籍を
人事部に相談した。また、B君にはネットワーク構築の諸手続と書式の整備を命じた。
こうして、システム管理部は共通LANの稼働監視と障害対応、ユーザ部門のLAN及び
サーバやパソコンの障害対応、メールアドレス及びドメイン名やIPアドレスなどの割当
て管理を実行することになった。また、次の各程手続を作成し、必要な書式の整備を行
った。

・ドメイン名、IPアドレス、メールアドレスの交付申請
・サーバ設置、パソコン設置、ソフトウェア利用の申請
・ネットワーク配線工事申請
・電源設備工事申請

システム開発部は、LANシステムの開発とパソコン操作などのユーザ指導を担当するこ
とになった。インターネット接続の運用管理も受けもつので、インターネットサービスプ
ロバイダとの折衝、フアイアウォールの管理、インターネットからの不正アクセス監視な
どが必要となった。
R部長は社内情報システムの最終形態まで考慮して、情報システム運用担当区分、情報
システム運用規程を表1及び表2のとおりにまとめ、経営層に諮って了承を得た。同時に
ネットワーク管理委員会を組織することも了承された。ネットワーク管理委員会はシステ
ム管理部、システム開発部、総務部から選出されたメンバから成る。ユーザ部門は原則と
して自部門のLAN構築と運用を任されるが、技術担当者が不足しているので、オペレーシ
ョンのサポート、障害時の対応などをシステム管理部に依存せざるを得ない。そこで、ユ
ーザ部門はLAN運用の窓口担当者を置くことになった。

表3 表1 情報システム運用担当区分(抜粋)

    (A) (B) (C) (D)
            担当機器
         \
作業内容
共通LAN、電源 部内LAN、
支店内LAN、
営業所内LAN
部内サーバ、
社内向けWWWサーバ、
パソコン
情報系サーバ、
社外向けWWW
サーバ
(1) 増設・変更計画 システム管理部 ユーザ部門 ユーザ部門 システム開発部
(2) 搬入と設定作業 システム管理部、
総務部
ユーザ部門 ユーザ部門 システム開発部
(3) ネットワーク接続
作業と動作確認
システム管理部 【 f 】 ユーザ部門 【 g 】
(4) 稼動監視と
障害対応
システム管理部  システム管理部 ユーザ部門、
システム管理部
システム管理部

注:総務部は、電源設備工事やネットワーク配線工事などについて、ビル管理者との折衝
及び工事業者への発注窓口となる。

表2 情報システム運用規定(抜粋)

1.情報システムの目的

・ホストやサーバへのアクセス、電子メール、電子掲示板などを利用した情報共有、並び
 に社内及び顧客向け情報発信とする。

2.情報発信の方イドライン

・有用な情報は積極的に発信するが、著作権侵害の防止に注意する必要がある。
・顧客向け情報発信については、社内情報の社外流出の防止に注意する必要がある。別途
 定める規程に基づいて社外向けWWWサーバを利用する。
・社内向けWWWサーバの設置に際しては、開始期日、コンテンツ制作者、技術責任者を明
 記し届け出る。
・親睦会活動など業務以外の利用は禁止しないが、節度をもって行う。

3.ユーザ部門における運用管理のガイドライン

・部内サーバの運用では、データのバックアップ、ソフトウェアのバージョンアップ、ユ
 ーザのアカウント管理を行う。
・社内向けWWWサーバについて、提供情報の更新と、利用状況の把握を行う。
・部内パソコンの運用では、不正利用の監視、紛失の防止、コンピュータウイルス対策を行う。

 


設問1

本文中の[業務システムネットワークの社内LANへの統合]で、"経費削減、効率化
などのため、業務システムネットワークを社内LANに統合する"とあるが、"経費削減、
効率化など"に当たる具体的内容を三つ挙げ、それぞれ30字以内で述べよ。

設問2

情報系システムを再構築した目的の一つは、"別の切り口での集計値が欲しいとの要
望がユーザから次々に出され"ることへの対応であった。S社の再構築では、どのよう
な方法で実現しているか。60字以内で述べよ。

設問3

イントラネットの検討に関する、次の小問に答えよ。

(1)本文中の【 a 】〜【 d 】を、それぞれ10字以内の適切な字句で埋めよ。

(2)本文中の【 e 】でA君は、T部長を説得してイントラネットの導入に同意させた。
  A君が述べた内容の骨子を二つ挙げ、それぞれ50字以内で述べよ。

設問4

社内情報システムの応答時間が悪くなったことを発見したエンドユーザが、ユーザ部
門の窓口担当者にトラブル発生を連絡した。連絡後の障害箇所切り分け修復手順を、誰
が何をするという点に着目して、150字以内で述べよ。

設問5

表1の情報システム運用担当区分に関する、次の小問に答えよ。

(1)S社の方針から見て、表中の【 f 】、【 g 】にふさわしい部署はどこか。それぞ
  れ二つの部署名を答えよ。

(2)担当部署に問題がある欄が一つある。表の列及び行を記号(例えばA-2)で指摘
  し、正しい部署名を答えよ。また、その理由を70字以内で述べよ。

設問6

ネットワーク管理委員会及び表2の情報システム運用規程に関する、次の小問に答えよ

(1)R部長がネットワーク管理委員会が必要と考えた理由を、60字以内で述べよ

(2)社内向けWWWサーバの設置を届け出る意義を、60字以内で述べよ。

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