テクニカルエンジニア(ネットワーク)過去出題問題

 平成9年 午後1 問3

最終更新日 2004/01/24
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Tomのネットワーク勉強ノート
 過去問(午後)
   テクニカルエンジニア (ネットワーク)過去問(午後)
     テクニカルエンジニア(ネットワーク)過去問 平成9年 午後1 問3

3

TCP/IP化によるネットワークの統合に関する次の記述を読んで、設問1〜3に答えよ。

G銀行は、盛岡にあるコンピュータセンタに勘定系ホストコンピュータ(以下、勘定系ホ
ストという)と情報系サーバを設置し、盛岡の本店と各支店とを接続している。支店は、
青森、山形、東京などにある。ネットワークは勘定系と情報系に分かれている。
図1に勘定系システムの全体を示す。勘定系端末はパソコンを主体として構成し、その機
能はエミュレータを用いて実現している。勘定系端末は、切替え装置2、一般アナログ専
用回線(4線式、9,600ビット/秒)や公衆電話網(9,600ビット/秒)、切替え装置1、CCP(通信
制御装置)を介して勘定系ホストに接続されている。勘定系端末は各支店に10台ずつ設置
している。
切替え装置1とCCPとはモデムを介さず直結している。切替え装置1と切替え装置2は、一
般アナログ専用回線や公衆電話網とモデムで接続している。切替え装置2と勘定系端末は
構内モデムと分岐回線で接続している。通常は一般アナログ専用回線を使用しているが、
障害時には手動で公衆電話網に切り替える。全本支店を同時にバックアップすることがで
きる。
OSI基本参照モデルに基づき、勘定系プロトコルの階層構成を表1に示す。第2層はHDLC
順であり、第3層以上はホスト通信手順である。このホスト通信手順は、第3、4層に対応
する転送制御と第5層に対応する要求/応答制御などからなる。図2に現在の勘定系プロト
コルの電文形式のうちHDLCフレームの情報部だけを示す。
勘定系端末の応答時間の設計目標値は10秒以内としている。



図1 現在の勘定系システム

表1 勘定系プロトコルの階層構成

OSI基本参照モデル 勘定系プロトコル 
第7層 アプリケーション層 勘定系アプリケーション
第6層 プレゼンテーション層 画面定義/入力定義
第5層 【 a 】層 要求/応答制御
第4層 トランスポート層 転送制御
第3層 ネットワーク層 
第2層 データリンク層  HDLC手順 
第1層 物理層 V.24

 

転送制御ヘッダ 要求/応答制御ヘッダ 割り込みコード ユーザデータ

図2 勘定系プロトコルの電文形式

図3 現在の情報系システム

図3に情報系システムの全体を示す。コンピュータセンタに情報系サーバとLANがあり、
本支店にはローカルサーバ、クライアント及びそれらを接続するLANがある。これらのLAN
を高速ディジタル回線(64kビット/秒)で接続してIPネットワークを構成している。高速デ
ィジタル回線の障害時には、ルータが自動的にISDNに切り替え、全本支店を同時にバック
アップできる。
応答時間についてはそれほど厳しい要請はなく、設計目標値を1分としている。

勘定系端末の通信プロトコルをTCP/IPに変更し、情報系とネットワークを統合するため
に、方式1と方式2を検討した。
方式1のTCPコネクション上の電文形式を図4に、接続形態を図5に示す。 

TCPヘッダ 転送制御ヘッダ 要求/応答制御ヘッダ 割込みコード ユーザデータ 

図4 方式1の電文形式

図5 方式1による接続形態

TCPヘッダ 独自要求/応答制御ヘッダ 割込みコード ユーザデータ

 図6 方式2の電文形式

図5 方式2による接続形態

方式1では、TCPコネクションで転送制御ヘッダ以降のデータをそのまま転送する。勘定
系ホストから勘定系端末にデータを送信する場合、勘定系ホストは機器A-1に図2の形式の
電文を情報部とするHDLCのフレームを送信する。機器A-1はHDLCのフレームの情報部だけ
を取り出し、TCPコネクションを使用して、機器A-2に転送する。機器A-2は、逆にHDLC
フレームに戻して勘定系端末に送る。
ここで、CCPと機器A-1はモデムなしで直結する。機器A-2は構内モデム経由で、10台の勘
定系端末に分岐回線で接続する。
方式2の電文形式を図6に、接続形態を図7に示す。 

方式2では、TCPコネクションを使用するのは同様であるが、勘定系端末の転送制御と要
求/応答制御のいずれも使用しない。それに代えて要求と応答を区別する独自要求/応答制
御ヘッダを定義する。第6層以上のデータはそのまま転送される。勘定系端末上のエミュ
レータがTCPコネクションの【 b 】になり、勘定系端末は、LANに直接接続されている。
また、LAN接続装置がプロトコル変換を担当して、勘定系ホストとLAN接続装置との間は、
従来の勘定系ホストとCCPとの間と同一のインタフェースとなる。
方式1では、機器A-1に機器A-2の個数分だけ【 c 】が必要になる。方式【 d 】では、勘
定系端末自体はIPアドレスをもたない。このためIPネットワークの管理システムによって、
勘定系端末を管理することはできない。方式【 e 】では、勘定系端末はIPアドレスをも
っているので一元的な管理が可能である。 また、コストの比較のために機器の価格を調
査したところ、表2のとおりであった。 

表2 機器の価格       単位 千円 

名称 価格 名称 価格
機器A-1 1,000 機器A-1 200
LAN接続装置 11,500 CCP  13,000
エミュレータ(方式1)  10  エミュレータ(方式2)  10 
通信ボード 100  LANボード 20 
構内モデム(9,600ビット/秒) 100     

方式1、2のいずれにおいても勘定系端末に使用するパソコンは新機種への更改を予定し
ているので、エミュレータ、LANボード、通信ボードの価格も考慮する必要がある。
青森、山形、東京の3支店だけについて、方式1と方式2との機器費用の比較を行った。
方式1の機器費用は【 f 】千円であり、方式2の機器費用は【 g 】千円である。ここで、
CCPは保守打切りで更改しなければならないので機器費用に含めたが、情報系ネットワー
クで既設の機器は含めなかった。モデムは従来のものが使えれば継続使用することとして、
この分は機器費用に含めなかった。 

青森、山形、東京の3支店だけについて、現状との回線費用の比較を行った。
回線費用については、方式1も方式2も同じで月当たり【 h 】千円となり、現状に比較し
て月当たり【 i 】千円の削減になる。ここで、ルータはISDN直接収容なのでTAは不要で
あり、回線接続装置は借用することとして回線費用に含めた。構内回線は自営で設置して
いる。回線のバックアップ時間は考慮せず、基本料金だけを算出した。


設問1

 本文中及び表1中の【 a 】〜【 e 】を、適切な字句で埋めよ。



設問2 
現在の勘定系システムと現在の情報系システムの専用回線について1時間ごとの平均使用
率を調査したところ、勘定系ネットワークは平均で5%、ピーク時でも10%であった。情報
系ネットワークは平均で20%、ピーク時は60%であった。更に、ピーク時の1分ごとの平均
使用率を調べたところ、60±30%の変動が見られた。勘定系のネットワークを情報系のIP
ネットワークに統合することに関する、次の小問に答えよ。

(1)考えられる性能上の問題点を50字以内で述べよ。

(2)(1)の問題点を解決するためのルータでの対策を、20字以内で述べよ。

設問3

 3支店の機器及び回線の費用算出に関する、次の小問に答えよ。

(1)方式1の場合の通信ボードと機器A-2の必要数を求めよ。

(2)方式2の場合のLANボードの数を求めよ。

(3)本文中の【 f 】〜【 i 】を、適切な数値で埋めよ。

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