テクニカルエンジニア(ネットワーク)過去出題問題

 平成9年 午後1 問1

最終更新日 2004/01/24
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Tomのネットワーク勉強ノート
 過去問(午後)
   テクニカルエンジニア (ネットワーク)過去問(午後)
     テクニカルエンジニア(ネットワーク)過去問 平成9年 午後1 問1

問1

LANにおけるパソコン会議システムの運用管理に関する次の記述を読んで,設問1〜3
に答えよ。


[I社の現況〕
T社の本社工場,千葉工場,名古屋工場にはLANが導入されており,TCP/IPによる電
子メールやOA処理などに利用されている。千葉工場と名古屋工場は,ISDN基本インタ
フェースを用いて,それぞれ64kビット/秒で本社工場と接続されている。T社のネット
ワーク構成を図1に示す。



図1 I社のネットワーク構成


I社では,LANを含めたシステムの運用管理を,情報システム部のOA担当2名が行っ
ているが,最近トラブル対応や運用指導などに忙殺されるようになってきた。これは,
LANの規模拡大,複雑化などによって,本社工場の各部と千葉工場,名古屋工場にいる
OA推進者の対応力が低下し,OA担当がOA推進者に電話で対応方法を指導してもなか
なか理解してもらえないケースが多くなったためである。そこで,OA担当は,離れた
場所にいるOA推進者を効率良く指導するための方法を検討した。その結果,OA推進者
への遠隔指導には,パソコン会議システム(以下,会議システムという)の利用が適し
ていると判断した。


[会議システムの概要]
OA担当が導入を検討した会議システムは,パソコンで動作し,TCP/IPプロトコルに
よって,映像,音声,データの通信を行うものである。会議は1対1でだけ行うことが
でき,最大転送情報量は440kビット/秒である。帯域共有型のLANで会議を複数同時に
実施する場合は,会議数の管理が不可欠となる。そのために会議管理サーバが用意され
ている。会議管理サーバは,会議のために予約された会議数の管理と,会議の開始制御,
終了制御を行う。会議管理サーバが管理する範囲は管理ゾーンと呼ばれる。一つの管理
ゾーンには複数のセグメント(IPブロードキャストが到達する範囲)を含むことができ,
LAN上のすべての会議を,1台の会議管理サーバで制御することも可能である。会議管
理サーバは,自管理ゾーン内の各セグメントごとに,予約された会議数と,実施中の会
議数との比較を行い,会議数の余裕を判断して会議の開始制御を行う。しかし,LAN上
の転送情報量は,セグメントごとや時間帯によって大きく異なる場合がある。このよう
な転送情報量のばらつきに対応するために,会議管理サーバは,設置されたセグメント
(自セグメント)だけに対しては転送情報量の測定を行い,その結果に応じて,自セグメ
ントで許可する会議数を動的に変更する機能ももっている。図2に示すように,LAN上
に複数の会議管理サーバを導入し,この機能を活用して,きめ細かな会議管理を行うこ
とも可能である。

会議管理サーバによる会議数の管理と会議の開始制御を,図2に従って説明する。
会議管理サーバSl,Smはそれぞれ,セグメント1,セグメントn上に設置されている。
それぞれの会議管理サーバの管理ゾーンは,複数のセグメントから構成されている。 図
2の場合は,会議システムをもつパソコンAとBの間に存在するすべてのセグメントの会
議数は,Sl,Smによって管理されている。

例えば,AがBと会議を行う場合は,次の手順で開始制御が行われる。
@ AはBとの会議許可を会議管理サーバSlに申請する。
A Slは,まず自セグメント(セグメント1)がAからBへのルートに含まれている場
  合は,測定した自セグメントの単位時間当たりの転送情報量を基に,会議数の余裕
  を判断し,余裕があれば自セグメントに対して会議を許可する。次に,AからBへの
  ルートに含まれる管理ゾーン内の各セグメントに対して,予約会議数と実施中の会
  議数との比較を行い,すべてに余裕がある場合は各セグメントに対して会議を許可
  し,Smへ会議許可を申請する(Sl,Sm間の管理ゾーンについての処理も同様なの
  で説明を省略する)。
B Smは,Slと同様の処理を行い,会議が許可できた場合は,Slに会議許可成功を返
  答する。
C Slは,Aに会議開始許可を与える。
D AはBとの会議を開始する。


図2 会議開始許可手順


[会議システムの導入]
OA担当は,会議システムを本社工場に導入した。会議管理サーバは,図1に示した
ように設計部に1台だけ導入した。会議管理サーバには,情報システム部の2名のOA
担当が同時に各部のOA推進者を指導できるように,表1の設定内容に従って各セグメ
ントの会議数予約を行った。表1の設定は,将来千葉工場と名古屋工楊にも会議システ
ムを導入することを想定したものである。動作テストは,OA担当と各部のOA推進者と
の間で順次実施した。各パソコンでの設定上の問題が幾つかあったが,これらを見直し
た結果,本社工場の各部のOA推進者との間では,すべて映像の乱れもなく会議が実施
できるようになった。

表1会議管理サーバヘの設定内容

セグメントのネットワークアドレス 予約会議数 隣接セグメントのネットワークアドレス
a1 2 a2
a2 2 a1,a3
a3 2 a2,a4
a4 2 a3,a5,a6
a5 1 a4
a6 1 a4

会議システムの活用によって,OA推進者への指導は効率化した。この成果を基にOA
担当は,行き来の多い設計部,技術部,製造部相互のコミュニケーション手段の改善を
計画し,設計部,技術部及び製造部の希望者20名に会議システムを追加導入することに
した。
OA担当は,設計部,技術部及び製造部への会議システムの導入に合わせ,各セグメ
ントの予約会議数を変更した。システム導入後,利用度は徐々に増加し,それに伴い,
音声の途切れや映像の乱れなどで会議に不都合を来すケースが発生するようになった。
特に,製造部内又は製造部と他部との間で会議を行ったとき,問題が多く発生した。
OA担当は改善策をメーカに相談したところ,会議管理サーバでの管理能力の限界につ
いての説明と,会議管理サーバ設置場所に関しての指摘を受けた。


設問1
次の文章中の[a]〜[c]を,適切な字句で埋めよ。

ITU-Tのオーディオ・ビジュアル通信システム勧告はH.320である。H.320準拠端末
は,ISDNを利用し,[a]k〜2Mビット/秒の伝送速度で映像,音声などを伝送す
ることによって,ビデオ会議を実現できる。ここで,PCMによる[b]信号の符号化
方式として勧告G.711が使用される。また,動き補償予測と直交変換を組み合わせた,
[c]信号の符号化方式としては勧告H.261が使用される。

設問2
T社が導入した会議システムに関する,次の小問に答えよ。

(1)設計部と技術部内の合計10台のパソコン間で,相互に会議を実施する場合,会議シ
  ステムによって発生する最大転送情報量(Mビット/秒)を求めよ。

(2)千葉工場に会議システムを導入し,OA担当が千葉工場のOA推進者と会議を行う
  場合,本方式の会議システムではどのような問題が発生するか。40字以内で述べよ。

設問3
会議管理サーバの設定に関する,次の小問に答えよ。

(1)表1のネットワークアドレスがa1のセグメントは、図1のどの部を示しているか答
  えよ。

(2)表1に示すOA推進のための利用に加え,コミュニケーションの充実を図ることに
  した。新たに製造部で3台,設計部で3台,技術部で2台だけの会議システムが部門
  のコミュニケーションのために同時に会議を実施できるようにしたい。表2中の
  [d]〜[i]を,それぞれ最小幾つにすればよいか答えよ。ただし,千葉工場
  と名古屋工場との会議は禁止する。

表2 会議管理サーバに再設定すべき予約会議数

セグメントのネットワークアドレス 予約会議数
a1 [d]
a2 [e]
a3 [f]
a4 [g]
a5 [h]
a6 [i]

 (3)製造部内,又は製造部と他部との間の会議で,予約会議数内の会議にもかかわらず,
  音声の途切れや映像の乱れなどで会議に不都合を来す場合が発生するようになった。
  考えられる原因と、不都合を低減するためにとるべき処置を、それぞれ30字以内で述
  べよ。

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