テクニカルエンジニア(ネットワーク)過去出題問題

 平成8年 午後2 問1

最終更新日 2004/01/24
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Tomのネットワーク勉強ノート
 過去問(午後)
   テクニカルエンジニア (ネットワーク)過去問(午後)
     テクニカルエンジニア(ネットワーク)過去問 平成8年 午後2 問1

問1

販売管理システムの設計に関する次の記述を読んで、設問1〜4に答えよ。

A社は、本社、2工場、5営業所を拠点とする製造業の会社である。事業の拡大とシステ
ムの老朽化に伴い、ホストコンピュータ上で稼働している販売管理システムを、クライアン
トサーバ形態のネットワークシステムに置き換える検討を進めている。新システム移行の機
会をとらえて、社内ネットワークはLANとルータで再構築し、プロトコルをTCP/IPに統一
する。また、パソコンを営業担当者一人に1台の割合で配備することが決まっている。表1
に各拠点の規模を示す。表中の受注件数は、月当たりの明細数である。

表1 各拠点の規模

拠点(部門)名 営業担当者数
(=パソコン台数)
担当顧客数 受注件数
(明細数/月)
取扱い製品
本社
(営業部1)
(営業部2)
(営業部3)
40人
40人
30人
200社
200社
150社
20,000件
20,000件
15,000件
各拠点とも全製品
(20,000品種)を
販売
営業所1 50人 250社 25,000件
営業所2 10人 50社 5,000件
営業所3 10人 50社 5,000件
営業所4 10人 50社 5,000件
営業所5 10人 50社 5,000件
工場1 - -

各工場とも
50,000件を出荷

10,000品種を製造
工場2 - - 10,000品種を製造
合計 200人 1,000社 100,000件 20,000品種

図1〜3は新しいネットワークの構成案で、各拠点の規模をもとに予算構成の段階で作成
したものである。その後、販売管理システムの検討が進み、現在、ネットワーク関連事項の
具体的な設計を行っている。


図1 新ネットワークの構成案(WAN)



図2 新ネットワークの構成案(本社LAN)


図3 新ネットワークの構成案(営業所LAN)

【販売管理システムの概要】

A社の扱う製品はすべてカタログ製品で、営業担当者の受注通知に基づいて、工場か
ら顧客に直送される。販売管理システムは、受注・出荷・売上を管理するシステムで、
工場の生産管理システム、経理部門の経理システムと共に、A社の基幹システムになっ
ている。
本社営業部及び営業所の担当者が入力した受注データは、該当製品を生産している工
場の生産管理システムに転送される。工場から製品が出荷された時点で、販売管理シス
テムは、生産管理システムから出荷データを受け取り、売上処理を行う。月初めには、
その前月の受注売上情報をもとに、請求書を印刷する。入金情報を経理システムで管理
するため、販売管理システムは、毎月末に経理システムに売上データを送る。また、経
理システムから毎日入金データを受け取り、与信管理に利用する。
表2に販売管理システムの処理の概要を示す。

表2 販売管理システムの処理


処 理 名    

  
  
 
 

   

処理の内容 利用するデータベースの情報
顧客
情報
製品
情報
受注売上
情報
受注入力 入力された受注(オーダ)から受注売上情報を生成する。 
また、顧客情報(与信残高)を更新する。
更新 参照 追加
受注データ
転送
その日の受注売上情報から受注データファイルを作成し、
生産管理システムに転送する。
    更新
売上計上 生産管理システムから転送された出荷データをもとに、該当
する受注売上情報を更新(売上扱いに変更)する。
    更新
売上データ
転送
受注売上情報から当月の売上データファイルを作成し、経
理システムに転送する。 
参照   更新
請求書発行 月初めに、前月の受注売上情報をもとに明細付きの請求書
を印刷する。請求書の印刷は、本社営業部又は営業所単 
位に、その顧客について、まとめて行われる。
参照   更新
与信更新 経理システムから転送された入金データをもとに、顧客情報
(与信残高)を更新する。
更新    
各種
問合せ
問合せに応じて、各種情報を提供する。  参照  参照 参照

【販売管理システムの仕組み】
販売管理システムのデータの流れを図4に示す。


図4 販売管理システムのデータの流れ

データは、すべて1台の販売管理サーバのデータベース上にある。
オンライン処理の業務プログラムはサーバとパソコンの双方に存在し、プログラム間
でメッセージを交換しながら処理を行う。サーバ側のミドルウェアは、パソコンから送
られてくるメッセージに対応した業務プログラムを動作させる。表2の処理のうち、"受
注入力"、"請求書発行"及び"各程問合せ"がこの処理形態をとり、残りはサーバ上の
バッチ処理である。請求書の印刷はパソコン側のプリンタで行う。パソコンからプリン
タへの出力は、本社営業部又は営業所単位に配置する部門サーバ経由で行われる。
生産管理システムと経理システムは、クライアントサーバ形態のシステムである。こ
れらのシステムと販売管理システムとのデータ交換については、サーバ間のファイル転
送を利用する。このファイル転送は各サーバの夜間処理の中に組み込まれ、自動的に行
われる。 ・
販売管理システムのサービス時間は、8:00〜22:00である。販売管理サーバは、こ
の時間帯はパソコンとのオンライン処理を行い、夜間はバッチ処理とファイル転送、デ
ータセーブを行う。図5は、夜間処理時間が最も長い月末の運用スケジュールである。


図5 夜間の運用スケジュール

【ネットワークの見直し】
B君はA社のネットワーク担当者である。今回のシステム設計では、次の作業を担当し
ている。
・性能要件を洗い出し、プロトタイプによる性能測定を行う。
・性能要件と信頼性の観点から、ネットワーク構成(図1〜3)を再検討する。

【性能要件の整理】
B君は業務プログラム開発チームと検討を行い、性能要件を次のように整理した。

(ア)22:00に開始するサーバの夜間処理は、翌8:00には終わっていること。
(イ)表3の最繁時でも、受注入力処理の応答時間は5秒以内であること。
(ウ)本社営業部及び営業所で8:30から開始するパソコン上の請求書発行処理は、45分
   以内に完了すること(印刷情報が部門サーバにスプールされるまでの時間であり、プ
   リンタの印刷時間は含まない)。

表3 受注入力処理の利用頻度予測

  受注入力の様子

最繁時 
(16:00〜17:00) 
1日の中で最も受注入力が多い時間で、サーバ全体で1,800件(明細)/時
の入力がある。本社営業部及び営業所当たりの入力件数は、その営業担当
者数に比例する。
最繁時以外 9:30〜11:30にもピークがあるが、最繁時に比べ処理件数は少ない。それ以
外の時間帯は、ほぼ一定の入力件数となっている。

【プロトタイプ評価】
次に、B君と業務プログラム開発チームは、性能予測のために、受注入力処理と請求
書発行処理のプロトタイプを作成し、性能評価を行った。この評価に当たっては、次の
考え方をとった。

・評価環境: LANとWANを用いた環境を用意し、WANについては、64kビット/秒と
128kビット/秒の2通りを評価する。評価用サーバを販売管理サーバとみ
なし、クライアント側には、2台のパソコンと1台の部門サーバを用意す る。
・受注入力テスト: 受注入力の業務プログラムは、性能面から見て本番環境と同等のも
のを作成する。テスト用のツールを用い、1件(明細)の入力とその結果
の表示を自動的に100回繰り返すようにし、その所要時間を測定する。
・請求書発行テスト: 請求書発行の業務プログラムも、性能面から見て本番環境と同等
のものを作成する。1,000件(明細)分の請求書発行処理を行い、その所要
時間を測定する。
・ファイル転送テスト: 夜間処理のファイル転送はサーバ間で行われるが、今回は、評
価用サーバとパソコン間のファイル転送でその性能を測定する。パソコン
から評価用サーバにファイルを転送し、その所要時間からファイル転送の
実効速度(単位時間当たりのデータ転送量)を算定する。

表4 プロトタイプ評価結果



表4に、プロトタイプ評価の結果を示す。B君はこの結果をもとに、ネットワーク構
成の見直しを開始した。


設問1

夜間処理の要件に関する次の小問に答えよ。

(1)評価4で測定したファイル転送の実効速度を用いて、販売管理システムから工場1
  の生産管理システムへのファイル転送に必要な時間は何秒かを計算せよ。答えは小数
  点以下を四捨五入して求めよ。1件(明細)当たりの受注データは1,000バイト、営
  業日数は20日/月、日別の受注件数は一定として算出せよ。

(2)図5では本社から工場1へのファイル転送用時間に15分を割り当てているが、その
  時間幅の検討を行う場合、(1)のファイル転送所要時間以外に、考慮が必要な項目を二
  つ挙げ、それぞれ20字以内で述べよ。

設問2

 受注入カの要件に関する次の小問に答えよ。

(1) 表4の評価結果において、受注入力処理時間が、評価3と評価4では大きく違う理
  由を推定し、50字以内で述べよ。ただし、サーバの処理能力は十分余裕があるものと
  する。

(2)受注入力の応答時間は、評価環境では要件を満たしているが、実際のシステムでは
  悪化することが予想される。評価に盛り込まれていない応答時間の悪化要因を二つ挙
  げ、それぞれ30字以内で述べよ。

設問3

 請求書発行の要件に関する次の小問に答えよ。

(1)評価2の結果を用い、営業所1の請求書発行処理に要する時間は何分かを計算せよ。
  答えは小数点以下を四捨五入して求めよ。

(2)WANの伝送速度と請求書発行処理時間との関係を次の式で近似する。評価2で測
  定した結果を用い、【 a 】、【 b 】を数値(整数)で埋めよ。
  1,000件(明細)当たりの処理時間(秒)

  =【 a 】/ 伝送速度(kビット/秒) + 【 b 】

(3)性能要件(ウ)を満たすために必要となる、営業所1と本社間の回線速度は何kビッ
  ト/秒以上か。(2)の近似式から計算せよ。答えは小数点以下を四捨五入して求めよ。

(4)処理の仕組みや運用形態を見直し、図1のネットワークを変更せずに、性能要件
  (ウ)を満たす方法を考えたい。最適と思われる案とその理由を60字以内で述べよ。

設問4

 ネットワークスペシャリストの立場で、図1〜3のネットワーク構成案に対するネッ
トワークの信頼性を診断し、問題点を二つ挙げ、それぞれ20字以内で述べよ。また、そ
れらの対策について120字以内で述べよ。

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